ボッチポッチ。ステーション

天涯孤独、もうすぐ消えるちっぽけな人生を生きる女が思うこと。

その5 小学3年 仲良し

ペットのシェットランドシープドッグは鼻と四肢が細長くてもふもふの美しい毛並みをもつ、犬の中でも特に賢い中型犬。ラブラドールより一回り小さい華奢な子。
私より1歳年上で一緒に育った犬の姉。

彼女は本当にとても賢い子だった。
彼女は小さい頃から人間のご飯のおこぼれを貰っていた。そのせいか高齢犬になる7歳頃には前歯の何本かが抜けていた。
人間が食べるご飯はとても美味しいと知っていたので、私たちがご飯を食べていると抜けた前歯の間からよだれがたらーんと落ちてしまうのだった。それでもおねだりすることは一切なく、ただ静かに座って傍で私たちが食べるのをじっと見つめながらよだれをたらしている健気な子。太りすぎないようになるべくあげないようにしていたけど、お客さんが来た時はたくさん貰えたようだ。

また彼女は家の中ではおしっこなどをしないので、夜でもおしっこに行きたくなったらドアをカリカリと掻いて知らせるのだった。そしてドアを開けてあげると独りで済ませて帰ってくる!帰るのがどんなに遅くなっても粗相をしたことはなく、我慢していたのかすぐに外へ出て済ませてくるのだった。
彼女は決して私たちの手をわずらわせることはなかった。いつも静かに傍にいて見守っているようだった。

そんなある日、外へ出て行ったきり帰ってこなかった。母と私は方々探しまわったけど見つからなくて、チラシを作って電柱に貼付けることにした。母は車で遠くの方までチラシを張りに行った。
母はもちろん大騒ぎで知り合い全員に電話をかけまくっていた。
その翌日か翌々日に電話がかかってきて、庭にそれらしき犬がいるとの知らせだった。
私たちはすぐに車でその人のお宅へ行った。私は車の中に残っていた。しばらくして見慣れた犬と母が戻ってきた。とくに変わった様子の無い元気な姉が戻ってきてホッとした。どうやら隣町の豪邸のお庭にお邪魔していたらしいと母から聞いた。
なぜいなくなったのか分からないけど、その後は普通の日常に戻った。


小学3年生のクラスは賢明な女の先生のお陰で、すごく居心地の良い仲良しクラスだった。クラス全員が仲良しな友達といった感じで何の問題も無かった。私も男女ともみんな好きだった。
仲良しの友達も出来た。ちょっと泣き虫のKとカチューシャの似合うNちゃん。背の順で並ぶと一番後ろが私でその前にいた2人だった。KとNちゃんは私が知り合う前から友達だったみたいで、2人はケンカをするほどの仲だった。

ある日、クラスで劇をやることになってなぜか私が主役に選ばれた。背がクラスで1番大きかったせいかもしれない。もう一人主役に選ばれた子がいて、その子はクラスで1番のイケメンでお金持ちの男の子だった。劇は有名なカエルの絵本で、ふたりはいつもいっしょ、という題名だった気がする。カエルとその友達(覚えてない)のお話だった。
細かいことは忘れちゃったけど、劇の最後でその男の子と肩を組むのが照れくさかったのを覚えている。

劇は無事に終わって、Nちゃんがやたら褒めてくれた。その頃からNちゃんとは大の仲良しになった。Kと3人でやっていた交換日記がいつのまにか2人で交換することになったり、登校から何をするにもNちゃんと一緒になった。Nちゃんが最初の親友になった。
もちろんKとも遊んでいたけど、NちゃんとKは仲が良くないようだった。
Nちゃんは兄と妹のいる真ん中っ子だった。Nちゃんはいつもズボンばかり履いている私とは正反対で、いつもスカートばかりのガーリーな子だった。そして私より気が強かった。

Nちゃんは私に漫画本というものを教えてくれた。色々な漫画がたくさん集まった本というのを初めて知って私は虜になった。その頃始まったばかりのセーラムーンが載っている「なかよし」を買うことにした。それからNちゃんとは漫画を描き合う仲になった。
線のついたノートに見よう見まねで漫画を描きだした。私の絵描き人生の第一歩だった。


(たしか)この年、母の一族全員でハワイへ旅行した。私の初めての海外旅行だった。

母の一家はちょっと複雑な家族構成だ。母の実の母は、母が7歳位の頃にガンで他界していて、私が生まれる前に祖父は新しい奥さんを迎えていた。母からするとまま母になる。そして継母には連れ子が2人いた。兄と弟の兄弟で兄は母より少し年下、弟の方はずっと下という感じだった。なんせ弟の方は私より4、5歳上くらいなのだ。だから私には血のつながらない若い祖母と叔父が2人いた。
それと母の姉の子供たち、私の従姉妹は姉と弟で、姉は私より1歳年下で弟はそのさらに3、4歳下の子だった。従姉妹とは毎年長い休みなると遊びに行ったり来たりと仲が良かった。

母と私と、母の兄夫婦、母の姉と子供2人、祖父と祖母とその子供2人で、総勢11名でハワイへ飛行機で行くという贅沢旅行をしたのであった。あれ兄夫婦はいなかったかも?
ハワイは一族にとって最後の楽しい思い出となった。この後、一族は離散してしまうなんて誰も思いもしなかっただろう。